稽古場記録
2015年4月1日に顔合わせが行われ、15日より稽古開始。
そして5月1日には本番初日。
たった8回の稽古で創り上げた、彼らの「記録」。
4月1日(水):顔合わせ
プロデューサー・演出家・制作部・キャスト陣が集まる。
キャスト全員が演出家、有賀との初対面の日。
プロデューサーの加古より、人見知りが多いとは聞いていたものの、本当に人見知りばかり。
簡単な企画概要を説明し、初めての読み稽古。
声が小さい、事前に台本が手元に渡っているにもかかわらず漢字が読めない。
この公演は成功するのだろうか。小さな不安が頭をよぎる。
けれども、スタートはきってしまった。企画は走り出している。
4月15日(水):稽古初日
顔合わせから2週間。初めての稽古。
この日は配役決定の日。
稽古がなかった二週間、彼らはなにを思い、何をしていたのだろうか。
この日よりも前に、配役は決まっていたと有賀は言っていた。
とは言うものの、読み稽古を聞いて、彼の中で何か変化はあったのかもしれない。
まだ台本を「読む」ことが精一杯だった役者陣。
ここからどう彼らが成長していくのか。
4月17日(金):稽古2日目
立ち稽古開始。
稽古2日目といえど、今回は稽古日数自体が少ない。
稽古2日目にして全シーンを当たる。
「ちょっとまってください、考えさせてください」なんて言葉を待ってあげることはできない。
追いつけないヤツを待っている時間はない、死ぬ気で追いかけて来いといわんばかりに次々とシーンは進んでいく。
役者にはそれぞれ課題が山積みとなっていく。
駆け足過ぎるんではないかというほどのスピードで稽古は進み、演出がつけられていく。
「時間がない」ということを誰よりも実感していたのは演出家の有賀だろう。
次の稽古には通し稽古を予定している。
4月19日(日):稽古3日目
昼から夜までの長丁場。夜には通し稽古を予定している。
とは言え、前回の稽古から2日しか経っていない。
普通に考えれば無理がある稽古スケジュールではあるが、それでもそうしなければならない。
通しの結果は予想通りひどいものだった。
稽古でできていたことができない、セリフは忘れる。
何が大事だったかというと、「今日、最初から最後まで一本通すこと」の一点のみ。
こんな結果になることはわかりきっていたことだと有賀は言ったが、表情は少し落胆していたように思える。
が、たった一歩かもしれない、いや、数ミリかもしれないが、役者には「成長」の二文字が見え隠れした通し稽古だった。
4月21日(火):稽古4日目
少し遅れて稽古場に入ると異様な空気。
元々静かな稽古場であるけれど、それとも違う。
いつも穏やかな有賀の表情も厳しい。
だいたいの状況の察しはつく。
役者陣の「表現できない」、演出家の「伝えきれない」、両者の想いの結果だろう。
役者は必死に有賀に喰らいついていこうとしているものの、そんなに簡単に上手くはできない。
外部での演出が初めての有賀も自分の演出をうまく彼らに伝えきれない。
両者の焦りがからのこの状況。稽古も折り返し地点。本番まで、あと10日。
4月22日(水):稽古5日目
衣装合わせ。
衣装を着てみると、やっぱりテンションはあがるもの。
衣装、小道具などはやはり芝居をする上で、外からキャラクターをつくりあげていく、
いわばパーツのようなもの。
いつもの稽古着ではなく、スーツだったり、セーラー服だったり。
それだけで役者陣の表情もいつもより明るいものだったように感じる。
4月28日(火):稽古8日目(最終稽古)
諸事情により、6日目、7日目の稽古にいけず、最終稽古。
舞台監督・音響・照明と、スタッフ陣も勢揃いしての最終通し。
夜の通し稽古に間に合うように稽古場入りをしたら、最後の抜き稽古中。
通し前の休憩で有賀に「出来栄えは?」と聞いてみたら、
「稽古でやってきたことをちゃんとできれば面白い作品だと思う」と回答された。
最後の通し稽古は多少の失敗はあったものの、顔合わせからは考えられない成長振りだった。
彼ら、彼女らの努力、そして演出家有賀と、プロデューサー加古の影ながらの支えの賜物だろう。
芝居があって、照明・音響が入って、舞台美術ができて、お客様が入って、やっと完成する舞台公演だが、
一つ目のパーツは出来上がった。
まもなく初日の幕が開く。
お客様の目に、彼らは、作品はどのように映っただろうか。